政宗の従者幸村 2

 国主という立場上、衆道の知識は人並み以上にあるが実際に男と交わるのは初めてで。奥のそれを見付けるのは苦労するかと思ったが。
「ぁああ!」
 程なくして幸村の硬く閉じられていた唇から喘ぎといって良い声が零れ。
 案外簡単にそれを見付けたのを悟った。
「な、なに?ぁああ」
 知識のない幸村は、いきなりの快楽に混乱しているようで、政宗を振り返った彼の瞳には怯えの色が濃い。そんな幸村に大丈夫だ、ここを触られてこうなるのは当たり前だ、と告げつつ彼の頭を空いている方の手で宥めすかすように撫でながら。
 政宗は中を解して行った。
「はぁあ、んっ」 
 ひとしきり香油で濡らした指で中を慣らし、指を引き抜き幸村の体を仰向けにひっくり返すと。最初は硬かった彼の表情も、快楽に蕩けていて。足の間の淡い色の雄からも、とろとろと滴を零していた。
「中々、そそる姿じゃねえか」
 呟きに、幸村の瞳が政宗を映すものの、焦点が定まっておらず。先程まで与えられていた快楽を消化しきれていない様子だ。
「もっと気持ち良くして欲しいか?」
「っ」
 耳元に囁くと。はっとした表情を見せると同時に、焦点を取り戻した幸村が。頬を紅くし顔を背けながらも頷いたのを確認して。
 政宗は着物の帯を緩め、幸村のしなやかな足を抱え上げ。猛った自身を蕩けた尻穴の奥に一気に突き入れた。
「あああ!!」
 瞬間。幸村の中心から勢いよく白濁が噴き出す。
「後ろだけで、しかも挿れられた瞬間イクとはこっちの才能あるじゃねえか。っと、まだ飛ぶなよ、オレが楽しめてねえんだから」
「あひ、あ、あっ」
 わざと幸村の羞恥を煽る様な言葉を投げ付けながら、揺さぶる速度を早め、奥を突き上げる。
「あ、あ、あ」
 暫くして幸村が力無い喘ぎと共に再度の絶頂を迎えた際に。政宗も幸村の中へ精を吐き出した。

「……何やってる」
 政宗の視線の先には、つい先程まで隣でぐったりしていた筈の幸村が不恰好に俯せで倒れている。
 政宗がおざなりに着せてやっていた夜着の裾が捲れ上がり、剥き出しの尻、その小さな穴からは子種が筋を作りながら零れ落ちていた。
「も、申し訳ございませぬ。体が重く動けなく……」
「だったら無理に動かさなきゃいいだろうか」
 幸村の中は今まで抱いた女の誰よりも具合が良く、何度も求め無理をさせた自覚は政宗にもある。
 だから普段は事が終わったらすぐ追い出す相手を、寝床に留まらせていた。しかし。
「終わったら殿のお部屋から出るように、と。殿は床に呼んだ相手と共にお休みになる事はないと聞き及んで」
 どうやら幸村に終わったらすぐに出て行くように、と言い含めていた人物が居るようだ。
「まあ確かに今まではそうだったが。こんな、ぐったりしてる部下に今すぐ出てけって言う程非情じゃねえ。それに、ここの始末もしてやらねえとな」
「ひん!」
 ばちんっと尻を強めに叩くと、尻穴から新たな子種が溢れ出る。
 身籠る心配が無い男相手だからと、思う存分中に注ぎ込んだから、幸村の尻穴の中は白濁まみれになっている筈だ。このまま放置していては彼の体調に影響が出るだろう。掻き出してやらなければ。
 普段ならそんな作業は小姓に任せる所だが、政宗以外では幸村がまた先程の香油の時のように暴れ出す可能性もある。それに何だか、自分が可愛がった後のこの体を、政宗は他の者に見せたくなかった。
「と、殿!何を」
 動けずにいた幸村を、荷物のように肩に抱え上げる。
「体ならば自分で洗えまするっ殿のお手を煩わせるわけには!」
 肩から下りようした幸村に。
「ならオレの前で自分の尻穴いじくりまわして綺麗にして見せるか、このままオレの手で綺麗にされるかの二択だ。どちらを選ぶ?」
「!」
 選択肢を投げ掛ける。政宗に抱えられた幸村は、体を強張らせた後、小さな、消え入りそうな声で答えを告げてきた。
「……殿の前で、自分でなど某には無理でござる……」
 香油を塗り込める際、既に中を政宗に触れられているから、自分で主の前で掻き出す行為より、主の手で綺麗にされる方が幾分抵抗が少ないのだろう。もっともほんのわずかの差ではあるだろうが。
 その証拠に幸村はきゅ、と目を瞑り、表情を隠すように俯いている。髪の間から覗く耳は紅い。
「なら大人しくオレの手で洗われときな」
 抵抗を失くした幸村の体を抱え直し、湯殿へと歩き出す。政宗としては幸村が自分で綺麗にするというのなら、その様子を見る楽しみもあったから、どちらを彼が選んでも構わなかった。というか政宗にとってどちらに転んでも良い選択肢を出したのだ。政宗に従順に仕える幸村は、その選択肢に意見をする事はないだろう、と。

「は、あ、ぁん!」
 突き出された尻、その丸みのある肉を掴み引き寄せてズプズプと雄を抜き差しする。
 湯を浴びつつ幸村の中の子種を掻き出している最中、彼が耐え切れずに発した喘ぎ。艶のある甘い声に煽られ今に至る。
 背後から激しく揺さぶると、幸村の全身が震え、直後彼が達し。
「ああ、ぁ」
「くっ」
 政宗も自身を引き抜き、今度は幸村の尻に白濁を撒き散らした。

「朝までここに居ろ、これは命令だ」
 湯浴みから戻り。放っておけばまた重い体を無理に動かして部屋から出て行こうとしそうな幸村にそう言い付け、寝床に横たわらせて。政宗は自分も彼の隣に寝転んだ。
 朝まで、との政宗の言い付けに、幸村は驚いていたようだが、命令と言われてしまえば逆らう気など無いのだろう。
 こくんと素直に頷いた。
 それを確認した政宗は、隻眼を閉じ眠る準備に入った。
 たまには二人寝も良いだろう、何度も楽しませてくれたのだ、疲れ切ったであろう幸村の体は自力で自室へ辿り着けないだろうから、この部屋で寝せてやる位の労わりはあっても良いだろう、と考えながら。
(……まあ、もしかしたらゆっくり休ませてやれねえかもな)

(ここは一体……)
 ぼんやりと瞳を開けた幸村は。視界に映る天井が自室ではないその理由を考えながら寝返りを打って。
(!)
 隣に居る人物に、自分がこの部屋に居る理由を思い出していた。
(そうだ、夜伽に……)
 衆道に興味を示さなかった筈の主、政宗から夜の相手として呼ばれ、その後隣に寝る事を許されたのだ。
 だから今幸村が居るこの場所は、主、伊達政宗の寝所だ。
 起こさないように、出来るだけ気配を殺して。普段はここまで近付く事のない主の顔を眺める。
(やはり整ったお顔をしておられる)
 男女ともに政宗に思慕を抱く者は多い。幸村は思慕など恐れ多いと思っていたが、強く美しい主に、憧れに似た気持ちは抱いていた。そんな相手が気紛れにとはいえ、自分を求めてくれたのだ。
 作法を知らない幸村を抱くのは、政宗にとってきっと骨の折れる事だっただろう。きっと二度目はない。けれど。
 一夜限りでも主の熱に触れられて、幸村は幸せだった。
「?」
 恐らく二度とはお目に掛かれないであろう政宗の寝顔を瞳に焼き付けようと見つめていた幸村だが。
(何やら外に気配が?)
 見張りの者ではない気がする。政宗付きの小姓たちの間では疎まれている幸村だが、武を必要とする場で働く者達とは比較的関係は良い方で。城の見張り達とも顔見知りだ。慣れ親しんだ彼等の気配は、幸村にとって安心感を与えるものだが、今幸村が感じている気配は、どこか不安を煽る。まさか他国の刺客が入り込んでいるというのだろうか。この城の見張りは強固なはずなのに。
(もし刺客ならば)
 相手の目的はほぼ確実に、幸村の横に居る人物だろう。
(殿をお守りしなければ)
 感じる気配はまだ微弱で、政宗も隻眼を閉じたまま、だ。
 少し眠ったから、体力は幾分回復している。
 幸村は周囲を見回し、少し緊張気味に、武器になりそうなものを探した。

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