吸血鬼政宗×人間幸村 後日談

この先はダテサナのエロメイン 幸村も人外なお話になりますので、苦手な方はご注意ください。


「うぅ、やはり慣れぬ」
 政宗は自分をこの闇の世界に引き入れたくなかったようだが。この世界に来た事に後悔はない。育ててくれた両親に対しては黙ってこちらに来てしまった事を申し訳なく感じる心はあるが、あのまま人間として暮らしていれば自分は確実に死んでいたのだ。両親に息子の死を知らせるよりは、今の行方不明状態の方が幾分かましなのでは、と自身に言い聞かせていた。
 彼に抱えられ連れて来られたこの世界。今まで暮らしていた人間の世界とは相当に環境は違うが。何より政宗の傍に居られるのが嬉しかった幸村は。彼の育ったこの世界もきっと好きになれるはず。今は一日中陽の差さない状況に違和感を覚えてはいるものの。そのうち慣れるだろうと考えていた。
 幸村の口にした「慣れない」というのは、自身の格好で。
 政宗の力で、死ぬはずだった所を彼と同じ闇の種族になる事で生き延びた幸村だが。
 自身は吸血鬼になったのではなかった。
(このような姿、この種では当たり前と言われたが……)
 改めて自身の格好を確認して。かあ、と頬どころか全身が羞恥で紅くなる。
 幸村が今身に付けているのは、ガーターベルトに似た膝上までを覆う黒い布と、前を申し訳程度に隠している下着のみで。しかもその下着は細い紐を腰の後ろで結ぶ形で固定されていて、後ろには全く布が無く。
 そのせいで上半身はおろか、下半身も後ろから見たら尻すら丸見えの状態だ。そして背中、というより腰に近い位置からは。蝙蝠のそれに良く似た羽根が生えていた。
 幸村は「淫魔」と呼ばれる種族になったらしく。
 政宗から「この世界の淫魔は裸が当たり前だ」と言い聞かされていたし、同じような格好をした男女が平然と外を歩いたり、背に持つ羽根で飛んだりしているのを、今居るこの部屋の窓から見掛けてもいたが(もっとも裸の女性を免疫のない幸村が直視できるはずも無く、女性の姿が見えたらカーテンを閉めて窓から離れていたのだけれど)。
 今まで人間として服を着て過ごすのが当たり前だった幸村は。
 外には自由に出て良い、この辺りはオレの配下だからアンタを傷付けるような奴はいないから安心しな、と政宗から告げられてはいても。
 やはり恥ずかしく、政宗の住む屋敷の一室であるこの部屋から出ずに過ごしていた。

「あの……政宗殿」
「どうした?」
 少し用事を済ませて来る、と外出した政宗は、戻って来た際に土産だと言って幸村に数種類の果物を手渡してくれて。
 食事と言う概念がないらしい政宗の屋敷で、殆ど食べ物を口にする事のなかった幸村はそれらをすぐに食べて。人間の時の味覚と同じように美味しいと想えたのだけれど。腹の奥底のそれは収まらない。
 政宗の手を取った時から今までずっと。
 幸村は飢えを感じていた。
 最初は我慢できる程度のものだったが、ここ最近は我慢できない程の飢えを身に抱えている。しかしどうしたらそれが治るかが分からず。
「某、腹が空いて堪らぬのでござる。いただいた果物を食しても一向に収まる気配が無く……」
 そう政宗に訴えていた。
 幸村の言葉を受けた政宗は、少し驚いた表情を見せた後。
「アンタ、ほんとに純なんだな」
 淫魔の言葉の意味も良く変わってなかったのか、と笑った。
(淫魔というのが闇の種族のうちのひとつであるというのはさすがに分かる。……それに現す文字から何やら破廉恥な香りは感じるが)
 しかしはっきりとは分からず首を傾げていると。
「淫魔の食料は精気。つまりアンタのその空腹を満たす為には、相手から精を奪うしかねえって訳だ」
「!!」
 だからこのような格好なのか、これは他の魔物を誘う為の姿なのだと悟るが。
「うう、それならば某、この世界で生きていく自信がありませぬ」
「Ah、何でだ?オレの精を好きなだけ吸えば良いだろ。代わりにオレはアンタの血を貰うから」
「あっ」
 近付いて来た政宗のその手が、幸村の剥き出しの尻を撫でる。
 それだけでずくんと腰に甘い疼きを感じ。
 幸村は自身が精を好む魔物になってしまったのだと、身を持って理解した。
「ほんとは人間界に居た時から、ずっとアンタが欲しかったんだ」
 ようやく手に入れられる、と耳元で低く囁かれ。
 トクンと鼓動が跳ねると同時に、体全体がじん、と熱くなった。

「ん、ん」
 政宗のキスが巧いのか、それとも自分が感じ易くなっているからか。
(きっと、両方、なのであろうな)
 立ったまま抱き締められながら口付けを交わしているだけで、幸村の下肢には熱が集まり。緩やかに勃ち上がった自身は、面積の小さい下着からはみ出しそうな状態だ。
 背中に回っていた政宗の腕がゆっくりと背をなぞるように下って行き。
「っあ」
 剥き出しの尻、その二つの丸みをぐにぐにと揉まれる。
「あぁん!」
(ただ尻を触られているだけで……っ)
 敏感になった体は、尻肉を掴む政宗の手の感触だけでも声を上げる程快楽を感じてしまうようで。
「!!ぁあ、くうんっ」
 政宗の指に尻の奥、秘められたその場所の周囲を軽く突かれると。それだけで大きく体が跳ね。ひくん、と自分の尻穴が誘うように動くのが分かり。
 それが恥ずかしく、まだしっかり吸血鬼の盛装を着込んだままの政宗の胸に顔を埋めて表情を隠す幸村だったが。
「やぁあ!はう、ああぁ、んっ」
 つぷん、と音を立てて政宗の指が尻穴の中に侵入してからは。与えられる余りの気持ち良さに、羞恥も忘れて喘ぐしかなくなってしまう。
 本来の人間の体なら異物の侵入を嫌がるはずのその場所は。淫魔と言う生き物の性質か、増やされた指をも歓迎するように飲み込み。
「は、ぁふっ、んぁああ!」
 くちゅくちゅと音を立てながら尻肉を弄られるその感触だけで。幸村は絶頂を迎えた。

「っうく」
「?アンタ、何で泣いてる?」
(こんな、尻だけでイッてしまうなど……)
 精を放ち、忘れていた羞恥が戻って来て。今の自分の余りの淫乱さに、思わず幼い子供のように泣き出してしまった。
 政宗に嫌われてしまう、と考えて。
「政宗殿は、その清純そうな女性を好んで連れ込まれておられたから、うう……こんな淫乱な某など嫌なのでは、と」
「っアンタ可愛すぎるだろ」
 眉尻を下げて訴えると、意外な言葉と共に、ちゅ、と額や頬に口付けられる。
「安心しろ、淫魔の体が感じ易いのは当たり前だし、アンタならどんな淫乱も歓迎だ。……オレ以外から精気を貰わなければ、だが」
「某には政宗殿以外にこのような事を求めるなど出来ませぬぅ」
「良い子だ。……アンタの飢えはまだ満たされてねえだろ、続きしなきゃな」
「あっ」
 正面に居た政宗が背後にまわり幸村の足を抱えて。背後から抱き上げられるような体勢になる。小さな下着は床に落ちていて。幸村が今身に付けているのはガーターベルトに似たひざ上までの黒い布のみだった。
 いつの間にか前を寛げていたらしい政宗の、昂ぶった塊が。尻穴の入り口に触れる。
「ぁん」
 その灼熱のような熱さに、ふるりと体を震わせ。そして。
「ぁああー!!」
 ずぶり、と一気に突き立てられるが痛みは全くと言っていい程なく。幸村はただただ甘い喘ぎ声を零した。

「見な、アンタのちいせえケツの穴がオレのをうまそうに銜え込んでる」
「あ、ん?!」
 足を抱えていた政宗の片手が幸村の顎を掴み。その手に正面を向かされる。
「あ、あ」
 快楽を追うのに夢中で、今まで気付いていなかったが、自分達の前には大きな姿見があり。
「は、恥ずかしゅうござるぅっ……ぁああ!」
 そこには欲に濡れた顔の自分と。更に政宗の言うように、彼のものが出入りする度に、絡みつき、また飲み込もうと収縮する淫らな穴が映っていた。
 目を閉じ、鏡から逃れようとするが。
 一度目に焼き付いたその光景はなかなか消えてくれそうになく。
 ずぶずぶと音を立て責め立てられるたびに、先程の自分のいやらしい穴が脳裏に浮かび。確かに恥ずかしいという思いはあるのに、淫魔としての体は、それにすら煽られて興奮を覚えてしまうようで。
「ふ、ぁあー!」
 二度目の熱を放った幸村の中に。
 少し遅れて。
「ぁ、ぁあ…あ」
 政宗の精が勢い良く広がり。
 熱い奔流に、ずっと苛んでいた飢えがゆっくりと収まって行く。
 長く注がれる熱にひくんと体と羽根を震わせながら、自分の体は本当に人間とは全く変わってしまったのだな、とぼんやりと幸村は考えた。

「アンタの飢えは、収まっただろ。今度はオレを満たしてくれ」
「ひゃうっ」
 ずるり、と雄を引き抜かれ、その感触に崩れ落ちそうになった幸村を、政宗が横抱きにして。
 幸村の体は、今度は大きなベッドの上に落とされる。とほぼ同時に。
 政宗が首筋に齧り付いて来た。
「ぁあ」
 彼から血を吸われるのは初めてで。少しの痛みの後、訪れたのは全身を熱くする程の興奮。
 見上げると、血を吸った側の政宗も同じ状態になるのか、ぎらついた視線の彼と瞳が合った。
(この、興奮状態を治めるために、女性を抱いておられたのだな……)
 彼が今まで抱いた女性の事を考えると、忘れていたあの胸の痛みが甦って来て。
「某が政宗殿からしか精を貰わぬよう、政宗殿も……」
 思わずそう零してしまい。男の血など、旨いか分からぬのに、と思い至り告げた後に後悔したが。
「ああ、アンタが傍に居れば女なんて必要ねえ」
 そう答えてくれた政宗と、今度は正面から繋がり。
 幸村は幸せな快楽へ溺れて行った。

「そう言えば、某あの石を返そうと思い政宗殿を探していたのでござるが……もしかして事故の時に砕けて?」
 激しい行為の後だったが、精を好む魔物になったこの体は満たされ疲れは余り感じていない。だが少し眠気はあって。
 ベッドの上。政宗の腕の中で半分微睡みながら、幸村はずっと疑問に思っていた事を彼に尋ねていた。
「あれは、アンタの中に入ってる」
「え?」
「あれにオレの魔力込めたのが、今のアンタの心臓、だ。あれは元からオレが決めた相手に渡す為の石だったが」
 そこで一旦言葉を切り、少し間を置いてから。彼は人間界に訪れていた理由を聞かせてくれた。
「こっちで嫁取り薦められてたが、こっちの連中は欲が強くてオレの持つ力や権力には興味があっても、オレ自身を見る奴なんて居なくてな。一応この世界の中では吸血鬼はかなりの力を持ってて、オレは一応その一族のtopだからな。その力の陰で甘い汁を吸いたい奴は多い。……そんな連中に嫌気がさして、人間界ならもしかしたらこことは違う出会いがあるんじゃないかと思って、たまに結界を破って人間の世界に渡ってた。まあ向こうでも、違う種族であるオレを受け入れる人間なんていなかった。血を吸う時は相手を術で操ってたしな」
 そんな時にアンタと出会った。
 術なしでオレを受け入れたのは、後にも先にもアンタだけ、だ。
 最初あの宝石を渡したのは、もう嫁取りなんてする気をなくしてたから、そんな石なんてどうでも良いって気持ちからだったが。
 今思うと、あれは最初からアンタの手に渡るべくして渡ったのかも、な。オレの相手として。
 今まで説明してなかったが。
 アンタの心臓はオレの魔力で動いてるから、オレの魔力の供給が無くなったら。つまりオレが死んだらアンタも死ぬ。
 だから本当にずっと離してやれねえが、後悔してねえか?

 事故の後。初めて目覚めた時にも、似たような言葉は伝えられたが、今の政宗の声はその時より強く幸村の心に響く。
「目覚めてすぐにもお伝えしましたが、政宗殿と。好きな方と死ぬまで共に暮らせるなど、これほど幸せな事はありませぬ。それに例え心臓の事がなくとも。淫魔となったこの身は、この世界で政宗殿に見捨てられては生きていきませぬ。……離さないで下され」
「ああ、わかった。アンタはずっとオレの、だ」
 政宗の指が幸村の髪を優しく撫で。
 降ってきた言葉に安堵と幸福を感じながら、幸村は眠りへと落ちて行った。

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