Peach peach peach!



P4〜
 速度を緩やかに落とし、電車が到着する。ホームに立っていた一人の男子高校生が、通勤通学の為の利用者で込み合う車内に視線を向け溜息を吐いた後。覚悟を決めた表情で開いたドアから電車へ乗り込んだ。
 一筋だけ長い後ろ髪を髪ゴムで一つにまとめ、高校生にしてはまだ幼さの残る顔立ちの彼は、真田幸村という名だ。
 少し強張った表情は別に満員電車のせいではない。電車通学を始めたばかりの頃は、すし詰めの車内へ踏み込むのはかなり勇気の要る事だったが、既に高校に通い始めて2年近く経った今、もう慣れっこだ。
 そんな彼が電車に乗り込むのに覚悟を決めなければならない理由。
 それは所謂痴漢、というものだった。

(今日は遭わなければ良いのだが……)
 車内の隅、小さく空いたスペースに何とか体を滑り込ませ息を吐く。
 満員電車故の他者との体の密着はあるが、今の所不穏な空気は感じない。
 初めてそれに遭遇した時、幸村は単なる偶然だろうと考えていた。込み合った車内で、手が尻に当たってしまう事など、良くあるだろう。それに自分は男で、男の尻に好んで手を当てて来る者など居ない筈だ、と。
 しかしその考えは、今ではすっかり覆されている。
 手の持ち主が複数いるのかそれとも一人なのかは不明だが、ほぼ毎日、幸村の尻は触られた。ここ数日に至っては揉まれる事すらあって。
 そちら方面に少し、いやかなり鈍いと周囲から評される幸村からしても、もう痴漢としか思えなかった。
(しかし男の尻など触って何が楽しいのか)
 泣き寝入りするような性格ではないが、満員電車で痴漢を特定するのは難しく、しかも割と短時間で手は離れて行く為、幸村は耐えて電車に乗っている。少しの辛抱だと言い聞かせて。
(!)
 尻に不自然な感触があり、体が強張る。幸村の願いは通じず、今日も痴漢のターゲットになってしまったようだ。犯人はおそらく、背後に立っている人物だとは思うのだが、ぎゅうぎゅうに込み合った電車内で後ろを振り返って顔を確認するのは中々に困難だ。
 すぐ離れて行く筈、といつものように時間の経過に身を任せようとした幸村だが。
(なっ!?)
 手が予想をしていなかった大胆な行動に出た。
 普段は制服のズボン越しにしか感じないそれが。
(中に……っ)
 ズボンの中、更に下着も潜り抜けて直接肌に触れたのだ。
 身動きの取れない幸村を嘲笑うかのように、下着の中に入り込んだ手が、尻の丸みを撫で回し、薄い肉を揉みしだく。
(気持ちが悪い……っ)
 感触に体を震わせ、思わず目の前にあるものにしがみ付いた幸村だが。
「おい」
 頭上から聞こえた低い声に、自分がしがみついたものが前に立っていた人のシャツだと気付き、慌てて謝罪しようと顔を上げ。
「っ」
 その人物に思わず見とれてしまい、声を出すのを忘れた。



P17〜
 いつもならそのまま自身を挿入する所だが、政宗の脳裏にふと、以前悪友に押し付けられたあるものの存在が浮かぶ。
 今までそれを付けたいと思うような相手は居なかったが、幸村の、彼の尻に付ければ可愛いのではないのか。
「政宗殿?」
 動かない政宗を不思議に思ったらしい幸村が振り返る。彼の髪、一つに纏められ背に流れているそれを一筋掬ってキスをして。すぐに戻ると伝え、政宗は立ち上がった。
「ゃん!」
「ああ、やっぱりアンタには似合う」
 蕩けた内部は政宗が手にした異物をすんなりと受け入れる。
 政宗の視線の先、幸村の尻、その尻穴から生えているのはアナルプラグに取りつけられた、ふさふさの茶色い尻尾、だった。
プラグの大きさは何種類かあって取り替え可能で、一番大きいものはきついかもしれない、と中くらいのものを選んである。
「ああ、んぁ!」
 四つん這いでこちらに尻を突き出した状態の幸村の、ゆらゆらと揺れる尻尾を軽く、くいくいと引っ張る。中のプラグに尻穴を刺激された幸村の腰が艶めかしく揺れ。
 そんな恋人を見て政宗は満足げに笑んだ。
 小さな尻の間から、茶色い尻尾が覗いているさまは、政宗の興奮を煽る。




-Powered by HTML DWARF-