そのさきにみえるもの(2013夏コミ新刊) こぼれ話

「……」
 薬局で、シャンプーに似た形のそれを手に取り。
(家にあった方が幸の体の負担にもならねえんだろうが……)
 そんな事を考えながら暫く眺めていた政宗だが。
(否、掃除の時にメイドが部屋に入るからな。こんなもんが置いてあったら余計な詮索されかねねえ)
 そう結論付けて、結局元あった場所にその商品を戻した。

(まあ他に代わりに出来るものはあるしな)
 政宗が見ていたのはローションで。
 義弟・幸村と恋人関係になってから、家に置くべきかと悩んでいたのだが。それを部屋に置く事により、弟との関係がメイドや父にばれてしまってはまずい、と購入を諦めたのだった。
(それに)
 政宗に尻穴を舐められるという行為、兄にそんな行動をさせるのを嫌がっている風な幸村だったが。
 最近はその舐めらるという行為にも、感じるようになってしまったようで。
 政宗はその時の幸村の喘ぎ、耐えようとして耐えきれず、つい漏らしてしまったという喘ぎを気に入っていたから。
 これからもローションなしでも別に構わないか、とも思って諦めは早かった。

「兄上?」
「幸」
「何か買い物を?」
「そのつもりだったんだが、やっぱり必要ない物だったからやめた」
「??」
 店を出たところで、偶然学校帰りの弟に出会う。
 政宗の言葉に首を傾げ疑問符を浮かべるその手を引いて歩き出し、ケーキでも買って帰るかと伝える。
 確かこの近くには評判の良いパティスリーが在ったはずだ。
「幸?」
 甘いものが好物の弟は当然賛成するだろうと思っていたが、なぜか政宗の後ろの彼の足取りは重い。
「……その、店のものではなく……兄上に作っていただくのはダメでござるか?」
 足を止めて振り返ると、幸村は俯いていて、小さくそんな声が聞こえて来る。
 弟の可愛らしい要望に、政宗は笑って。
「OK、なら材料買って帰るか」
 と、行き先を変えて歩き出し。今度は幸村も足取り軽く着いてきた。

「お店のものも美味しゅうござるが、兄上の作ってくださったものは格別に美味しゅうござる」
 政宗作のシュークリーム、少し工夫してイチゴ味のクリームが入ったそれを一口食べた幸村が、幸せそうに微笑む。
 その笑顔に、政宗もつられて笑みを浮かべた。
「幸がそう言ってくれるなら、作り甲斐があるな」
 ぽふ、と弟の頭にぽふっと手を乗せ撫でると。幸村が更に笑みを深めた。

「幸、付いてる」
「んっ」
 食べ終わった幸村の唇の端に付いていたクリームを舐め取り、そのまま唇を重ねる。
「はふっ」
 少し甘い味の残る唇と舌を存分に味わってから離れると。幸村がとろんと蕩けた顔で見上げてきた。
「今度はオレに幸を食べさせてくれ」
「っ」
 耳元に低く囁くと。
 幸村は恥ずかしげに頬を染めた後。小さくしかし、しっかりと頷いて。
 それを確認した政宗は、幸村の体を抱き上げ自室へと歩き出した。

 弟の服を脱がせベッドに落とし。政宗も服を脱いで、ベッド上で大人しく待っている幸村に覆い被さって。
「ん、ふぁ」
 すっかり覚えた幸村の感じる場所を舌や指で刺激しつつ、洩れる声を楽しむ。
 政宗が何度も抱いた事で、すっかり抱かれる事に慣れた彼の体は、胸の尖りを舐めるだけでも。
「はう、ぁあん!」
「もうこんなにしちまって」
 中心からとろとろと先走りを溢れさせる。
 解放して欲しそうに震えているその場所には軽く唇を落とすだけに留め。
 政宗は幸村の体を俯せにひっくり返した。
「あ、兄上っ」
 手で幸村の小さな尻、その双丘を割り開きまだ堅く閉じられているそこに舌を這わせる。
 案の定、幸村が眉尻を下げた表情で振り返り、逃げようとするが。それをがっちりと尻肉を掴む事で阻止して。舌を動かし、閉じられた尻穴を湿していく。
「あ、ああ」
 充分に濡らしてから舌を穴にゆっくりとねじ込むと、幸村の小さな喘ぎが部屋に響いた。
 政宗が気に入っているその声。もっと聞きたくて、さらに舌で中を探っていく。
「や、ぁあ、くうん!」
 幸村の反応した場所を、重点的に舌でつつき、上がる声を楽しむ。舌の動きに合わせて、ふるりと幸村の腰が震えた。
「ここ舐められて結構感じるようになってきたな」
「っ」
 俯せだった幸村の体を表返し、解放して欲しそうにそそり立っている幼い中心の先端をぴんと軽く弾くと。
「ぁああん!」
 びゅくっと白濁が飛び散る。
「うう、兄上に、政宗殿に尻の奥など舐められるのは恥ずかしゅうござる」
 頬を紅く染め荒い息を吐きながら、幸村が政宗に抗議するような視線で見上げてきて。
「尻舐められて喘ぐアンタも、オレは気に入ってるんだがな」
 今幸村が浮かべている、あんな場所を舐めるなんて、と少し責めるような顔つきも、政宗にとっては中々に欲を煽るもので。
「ぁあ、あっ」
 まだ何か言おうとした幸村の足を大きく開き、濡れた奥に指を突っ込み掻き回す事で、その唇から出そうになった言葉を喘ぎへと変えた。
 やはり家にはローションを置かなくても良いな、使うのは家以外の場所で体を繋ぐ時位だと考えながら。

「あ、もうっ」
 舌で充分に濡らした尻穴は指もすぐに受け入れ、中の敏感な場所を刺激された事で幸村の中心は再び勃ち上がっている。中を掻き回していた三本の指を引き抜くと。
「ぁああんっ」
 その感触にすら感じてしまったらしい幸村の唇から嬌声が上がった。
「あにうえ、まさむねどのっはやくう」
 何も知らなかったはずの彼は、政宗から与えられる快楽を知ってから、意外と貪欲だ。それも自分が彼を変えた故ならば悪くない、と。
「OK、オレも幸を、幸村を感じてぇ」
「ひゃぁああん!」
 耳元に低く囁いて。政宗は可愛い弟兼愛しい恋人の体を硬く育った雄で貫いた。

「……兄上結局何を見ておいでだったのれ?」
 シャワーを浴び、くたりとベッドに寝転んだ幸村が、目を瞑ったまま政宗に尋ねる。質問の答えを貰っていない事を思い出したらしい。しかし眠いのだろう、呂律が回っていない。
「ん、そうだな、幸と旅行に行く機会でもあったら使うかもしれねえから、その時に教えてやる。……眠いんだろ、寝ちまえ」
「むう」
 政宗の返事に幸村は不満げに頬を膨らませたものの、眠りを促すように髪を優しく梳いてやると、睡魔に耐えきれなくなったらしく。すぐに小さな寝息を零し始めた。
 暫く弟のその可愛らしい表情を眺めていた政宗も、欠伸をひとつして。
 幸村を腕の中に抱き込みながら瞳を閉じた。

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